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【AngelBeats!SS】You and a way to walk. 

こんばんは!
やっと完成しました、ブログ2周年記念のひなユイ(日向×ユイ)SSです!

ジャンルはシリアスです。
アニメ第10話のネタバレがあるので見ていない人はご注意を。


では追記からどうぞ!



先輩は、また60憶分の1の確立で出会えたら…また体が動かなくても、
私のこと好きになって、結婚してくれるって言ってくれた。
その言葉、絶対に忘れないよ───。




「あ」
暑い炎天下の中、みんなが顔を同じ方向へ向け、無言で汗を流した。
特に、その中の一人の少年は冷や汗を掻いている。
「やっちまった…」
「お前、たまに打つと凄いんだけどな。あれ、本当にやったらファールだからな?」
「んな、冷静に解釈してんじゃねえよ。ほら、行ってこい」
少年は返事もしないままみんなが見ている方向へ走って行った。


「すいません!こっちにボール飛んできませんでしたか!?」
「ああ…やっぱり…今野球やっていたのね。これですか?」
申し訳なさそうな少年に対し、一人の女性は優しく微笑んだ。
いかにも優しそうな女性だった。
「すいません、俺の不注意で…。窓とか割れていませんか?」
「大丈夫ですよ。今ちょうど、窓を開けていたから」
「本当にすいませんでした…」
少年は再び深々と頭を下げる。女性はそれでも優しく微笑んだ。
「ふふ、元気が良くていいわね。ウチの子にもやらせてあげたいわ」
「はは、元気すぎてたまに人の家の窓とか割っちゃうのは困りものっすけどね。…子共がいるんですか?」
少年は尋ねた。
「そうなの。でも、昔の事故でね…体が動かなくなっちゃったの。
そのせいか、体を動かすスポーツのテレビをいつも見ているのよ」
「…そうなんすか…」
少年はそう返事をした後、あることに気が付いた。
「あの…これって」
部屋の地面には割れたガラスが散らばっており、水と花も一緒に落ちてる。
少年は、花瓶が落ちただのろうと思い、慌てて破片を拾おうとする。
「あっ、駄目、危ないわ」
「でも…」
「気にしないでいいのよ。さっき花瓶の水を換えようとしたときにボールが入ってきてびっくりしてついうっかり花瓶から手を離してしまっただけだから」
女性はやはり優しく微笑んでいる。しかし少年は悪い気がしてならなかった。
そんな少年の様子を見かねた女性はひとつ提案をした。
「それじゃあこうしましょ。私は今からこの花瓶を片付けるから、
あなたはそこの部屋の棚に新しい花瓶を用意してくれるかしら?」
「あ…、はい!」


花の入った花瓶を抱えた少年は、言われた部屋のドアを開けた。
「おじゃましま~す…と」
小声で開けた部屋にはテレビとベッド、そして女の子の姿があった。
「お母さん?さっきガラスみたいのが割れた音したどどうしたの?…って誰?」
「あ、えーと…」
見知らぬ少女の部屋に入って少年は少し動揺する。少女も目を丸くして少年を見た。
二人の微妙な視線の中、さっきの女性が後ろからやってきた。
「あら、どうしたの?」
「この人、誰?」
「ああ、野球のボールが部屋の中に飛んできてね、わざわざ謝りにきてくれたのよ」
「野球?…こんな暑いのに暑苦しい声が聞こえるなと思ってたら野球してたんだ…」
少女は笑って言った。そして最後にこう呟いた。
「いいなあ…野球」
少女はそう呟いて窓の外をボーっと眺めていた。
少年はさっき女性が言っていた子共なんだと一瞬で分かった。
それと同時に、こんなに元気な女の子がずっと部屋に籠もっていると考えたらとてもやるせない気持ちになった。
だから少年はそんな少女を楽しませたい、そう思うのだった。
「…野球好きなのか?」
「え?うん大好き!まあ、テレビでしか見たことないんだけどね…」
「そっか…よしっ!」
少年は決意した。この少女をたくさん楽しませてあげようと。
それは初対面なのに、昔からずっと思っていたような、揺るぎない自信となっていた。
「野球のこと、色々教えて、いつか出来るようになったら、そん時は勝負してやる」
「…私の体が動かないこと、お母さんから聞いたの?」
少女の問いに少年は黙って頷く。
「えへへ…楽しみにしてるね!」
自分の体にハンデを抱えていても、少女は笑って答えるのだった。
そして、そんな笑顔を少年はどこかで見ていた。そんな気がしていた。
「俺は日向。お前は?」
「ユイ!…あのね、ひとつ頼みがあるんだ」
「ん?」
ユイは少しだけ躊躇って言った。
「『先輩』って呼びたい…」
「なんで先輩…?」
「ふふ、この子ったらすぐにテレビに影響されちゃうんだから。
それは今やっているドラマよね?」
「お母さん!そういうことは言わない約束だよ!」
母と娘。二人だけだった静かな空間に、ユイの退屈な日々に光が差した瞬間の物語の始まり───。


「よっ」
「あ、先輩。今日早かったですね」
月日は流れて、二人はより一層親好を深めていった。
日向は、『先輩』というのを許可し、
ユイが「後輩は先輩に敬語を使わなくちゃいけないんですよ~」と言ったのでそういうことになっている。
実際、歳は違うのだが。
「いやあ、今日はまあ…ぶっちゃけサボリ?」
「はあ!?こんなに晴れているのに!先輩は野球に謝るべきだ!」
「嘘だよ。今日は早く帰って、ユイと散歩でも行こうかと思ってな」
「えっ?…だったら素直に言」
「──というのも嘘で、ただ面倒だっただけなんだ」
「オルァアァァ!今ちょっと嬉しかった気持ち返せやあああ!!」
ユイは見えないちゃぶ台をひっくり返すかの如くキレた。
最早日向にとってはからかって遊ぶのが定番となっているらしい。もちろん本人は気付いていない。
「じゃ、行くかあ」
「へ?どこへ?」
「決まってんだろ。散歩だよ散歩」
「でも、昔さっき嘘って…」
「ほら早く捕まれー」
「…天然のタラシみたいな手を使わないで下さい。それが計算なら次は先輩の口から脳汁タラタラだから」
「あんだって?」
他愛もない会話をして、日向は車椅子を押した。
文句を垂れながらもユイは楽しそうに笑っている。

外は少し肌寒くも感じたが、日差しは暑かった。
それでも通りかかった公園で遊んでいる子共たちや、部活で走っている学生たちは汗を流している。
ユイはそんな光景を、外に出るたび目撃しては、羨ましそうな目でボーっと眺めていた。
「…私と同い年の子は…みんなこうやって部活をやっていたりするのかな」
気が付くとそんなことを呟いていた。
「…まあ、していない奴もいるだろうけどな。大半の奴はしてるだろうよ」
「そう、だよね…」
日向にはユイが今どんなことを考えているのか分かっていた。
─神様って酷いよね。ユイがしたかったこと、全部出来ない体にしちゃってさ。
毎日のように思っていたことを、たまに思い返すことがある。
しかし何度神様を恨んでも、現状は変わるわけがなかった。
それは分かっているのに、呪わずにはいられないほど残酷なことなのだ。
「…外はいいね」
「なんだよ突然…俺は寒くなると外出るのは嫌だな」
「夏はいいの?」
「おうよ!青春の汗をかくのは今のうちだしな」
「あはは、そうだね」
ユイは笑って、日向を見た。そんなとき、ずっと秘めていた思いを話すことにした。
「ねえ、先輩は…どうして毎日私のところに来てくれるの?」
出会ってから長い月日が経って、ずっと疑問に思って、そしてずっと聞けなかったことだった。
「は?」
日向は突然の質問に呆気なく返事をした。
やがて、我に返ったように聞き返す。
「…なんでそんなこと聞く?」
「だって、ずっと分からないもん。体が動かせない私なんかに毎日会いにきちゃってさ…意味分かんないよ。
先輩はせっかく自由に体を動かせるのに…私のために時間を使っちゃって。
やっぱり私がこんな体じゃなければ、こんなに……」
「………」
ユイは秘めていた思いを吐き出した。勇気を振り絞って言った言葉は、とても弱弱しく聞こえた。
「なんでユイのところに行くか…なんて、考えたことなかったな」
日向はぽつりと呟いた。ユイはその言葉を聞き逃すことなく、聞き返した。
「どうして?」
「んなこと言われてもなあ……ん~、楽しいから、か?ユイは、楽しくなかった?」
「そんなことない!…でも……分かんないよ。先輩の周りにも友達がたくさんいるのに…」
日向はふぅと息を漏らして言った。
「やっぱお前アホだなー。あのなぁ、どーせお前は俺が気使ってるとか思ってるんだろうけどさ、それ間違いだからな」
「本当…?」
「本当だよ。俺が嘘付いたことあっか?」
「…ほぼ毎日付いているし。ていうかさっきも付かれたし…いてっ」
日向はユイの頭に痛恨の一手を食らわせた。
「ああ…お前の頭は本当に残念だ…」
「先輩に言われたくないわい!」
意外と痛かった一撃はユイを涙目にさせるほどだったらしいが日向にはお構いなしだった。
そんな反応も日向にとっては楽しくて仕方がない事だった。
「つまりは、お前は逃げられないから俺が来たら拒否なんてできないんだよ。
まー、常に俺たちはご主人様と犬関係にあるわけだ」
「なんだそれ…、もちろん私がご主人様なんだよね?」
「違う俺がご主人様だ」
そんなことを二人でいい争いながらやがて日向はユイの頭に手を置いて荒く撫で回した。
ユイは嫌そうにしながらも拒否はしなかった。
「お前、お母さんが見たら爆笑するほど頭が凄いことになってるぜ?そうだな、例えるなら鳥の巣ーーげほっ!!」
今度はユイが日向に痛恨の一手を食らわせた。…ユイの手では頭まで届かないのでみぞおちに。
「ああ…本当に先輩の感性は残念です」
「おまっ…みぞおちは止めろ…げほっ」

(どんなに荒くても…ユイは先輩に撫でられるのちょっとだけ、好きなんだよ。…絶対に言わないけどね)

ユイが日向に秘めた思いはまだまだ尽きなかった。


「先輩!私もう高校生なんだよ!」
「あー、そうか」
日向とユイ、出会ってから1年半が経とうとしていた。
「む。その反応はまるで、お前は中身も外見もまったく変わってないから高校生って言われても小学生と大差ねーよ。みたいな感じですね。もし本当にそんなこと考えてるんだったら脳天カチ割ります!」
「おっ!お前すげーな!俺の考えていることがよく分かっ──ゴフッ!何すんだよ!?脳天カチ割れるかと思ったぜ!」
「カチ割るっつただろうがぁ!!」
いつもの日常的な行動は、今日に限って切れが良かったらしい。
日向は頭をいつも以上に擦っていた。
「…先輩、今日は特別なんですよぉ…」
「特別?何が?」
日向はまったく分からないと言った顔で聞き返す。
その反応に、再びユイの一撃を食らおうとしたが
「何にキレたんだよ!?さっきの超痛かったんだよ!」
「ちっ」
とっさに手を掴んで止めた。
ユイはやるせない顔をして手を下ろす。
「私、今日で高校生なんですよ…。あと、誕生日…」
「あー…、そういえばそうだったな。すっかり忘れてたよ」
演技でもなく本気で忘れていたらしい。ユイは少し拗ねたような表情になったがすぐに変わり、
「…!もしかして、私がいつも先輩の頭を殴っていたからバカになっちゃんたんですか?」
「忘れてただけだっての。普通に俺今日何日とか分かんねぇし」
「それは…重症ですね。本当にごめんなさい。私が誰だか分かる?」
「その謝られ方はすげー不憫だわ」
舌をペロっと出した。

「…で、なんか欲しいモンでもあんの?」
「え」
ユイはきょとんとした。
「わざわざ、今日誕生日って言ったってことはそういうことなんだろ?」
「うーん…わかんない。でも、したいことはある、よ」
ユイは少しぎこちなく言った。それでも強く手を握り締めるのだった。
「へー、なに?」
「…バンド。テレビでね、いつも見てるんだ。
そのギターとボーカルの人がね。すっごいかっこよくて…。私、ずっと憧れだったの」
「………」
日向は無言で目をそらした。しかしユイの目線は日向をずっと追っている。
「じい~~~~~」
「……………」
「じいいいいいいいいいい!!!」
「……………………はあ、分かったよ。そんなにやりたいなら協力してやるよ」
「本当!?やった!」
観念した日向はため息をついた。しかし、表情はそれとなく楽しそうだった。
「そういえば、お前ギター持ってんの?」
「え?持ってないよ」
「そっからかー…借りたりできないか。俺がバイトして買ってやってもいいんだけど」
何気ない日向の一言に、ユイは大層驚いた。
「え!先輩今日優しくて気持ち悪いですね!やっぱり変なところ殴ったのかな…」
「をい。優しい先輩になんてこと言うんだよ。…今日は誕生日サービスだからな。
ゴマすっておけばいろいろ出ちゃうぞ」
「ゴマするって、普通自分で言う台詞じゃないよね?」
そのとき、コンコンという音が扉から聞こえてきた。
「ユイ」
扉を開けたのは、ユイの母だった。
「どうしたの、お母さん?」
「今ちょうどそこ通りかかってね、盗み聞きしちゃった。
ギター、本当にやりたいならお母さん買ってあげるわよ?」
母の言葉にユイは即答で言う。
「でも…いいよ。きっとすぐ飽きちゃうしね」
ユイは俯きがちに言った。
その言葉に母は不思議な顔をして言ったが、すぐに笑顔に戻った。
仲がいいはずの親子の間にちょっとした隙間があるような…そんな違和感を日向は感じている。
母は笑顔を崩さずに言う。
「…じゃあ欲しいものがあったら言ってね。ユイの誕生日祝いになんでも買ってあげるから」
「うん…ありがと」
それだけ言い残して、母は部屋を出た。再び日向とユイ二人だけの空間になる。
「いいのか?」
「うん。やっぱり誰かに買ってもらうなんて悪いし」
「誕生日なんだし、ちょっとくらい甘えてもいいんじゃねーの?」
「…これ以上はお母さんに甘えてられないよ。…その代わり先輩に甘えてるけどね」
「……」
日向は何も答えなかった。
日向からはユイが母親に甘えているようには見えなかったからだ。そして自分にも…。
「あのね…先輩と出会う前の話なんだけど。私の世話は全部お母さんがやってくれたんだ。
文句一つも言わないで…。それはすごく助かったし嬉しいんだけど、
やっぱりお母さんには申し訳ないなぁってずっと思ってるんだ」
「そんな…ユイの母さんはそんなこと思うはずがないだろ」
ユイは首を横に振った。
「お母さんはもちろんそう言うだろうけど、私はやっぱり──。
でもね、先輩が来てからお母さんちょっとは楽にさせてあげているかな」
ユイは笑顔を見せた。日向は静かに答える。
「ああ、だって俺ちゃんと約束したろ。ユイの母さんも楽にしてやるって………いやまて。約束、したっけ?」
自信満々だった言葉は最終的には曖昧な言葉になってしまった。ユイは心底残念そうな顔をしたが笑って言う。
「約束…私は覚えてないけど、先輩が約束したって言うならそうなのかもね」
そんな根拠のないことを言ってクスクスと笑っている。
そんなユイを見て日向は満足そうに笑うのだった…。
次の日。母は何故か朝からいなかった。
ユイはそれで特に困ることはなかったが、疑問だけが頭を与儀っていた。
今日は休日なので、昼頃になると日向はやって来た。
ユイは母のこととはまた違った疑問を日向に抱いている。それを今、つい口に出してしまうのだった。
「ねえ、先輩…最近野球してる?」
「あ~…そういや最近行ってなかったな。あ、言っておくけどユイのせいとかじゃないからな。
…まあちょっとプレッシャーに弱いんだよ俺」
思った以上に軽いノリで答えたが、それ以上は喋ろうとしないので、ユイもそれ以上は何も聞かないことにした。
「ただいま~!」
違う部屋で母の声が聞こえた。
「お母さんだ。どこ行ってたんだろ」
ユイと日向が扉のほうを見ていると、やがてコンコンと扉が叩かれた。
「ユイ!いいものがあるのよ」
母は嬉しそうに言う。母の後ろには何か大きいものがあるがユイには心辺りがないので不思議そうな表情を浮かべた。
「いいもの?」
母は後ろにある大きい何かを箱から出す。
「…よいしょ。じゃじゃ~ん!」
「…これ。どうしたの?」
「買ってきたのよ、ユイのためにね」
母が差し出したのは、赤を強調としたギターだった。
ユイが憧れを持っている音楽グループのメインボーカルの人が持っているギターと同じようなデザインのギター。
ユイは意味が分からないかのように無言だったがやがて口を開く。
「…いらない、って言ったよ……」
お礼よりも先に他の言葉が出てくる。
「でもこのギター可愛かったんだもの。それに、ユイが飽きちゃってもきっと日向くんがやってくれるわ」
「俺か」
ユイはまた口を閉じた。母はいつもの笑顔でユイを見つめている。
「もしかして、嬉しくない?」
「そんなことない!嬉しい…、けど……」
言葉に詰まる。その先の言葉はきっと母を傷つけてしまうと思い、なにも言えなかった。
「お母さん、ユイがギター弾いて歌っているところみたいなー。
もしそのギターを気にいってくれたなら弾いてほしいなー」
「…でも」
「それにね、娘がなにかに楽しそうに熱中しているところを見れたらお母さんは幸せ」
「あ……」
その言葉にユイは気付く。
自分はずっと、「楽に楽しく生きることが幸せ」と思っていた。
母に負い目に感じていたことは、自分に世話をかけるのは母にとって苦痛だと思っていたから。
それでも母が笑っていてくれるのは、母が優しいからだと。
「お母さん…」
「ん、なに?」
母が幸せと思うのは娘が元気なこと。ただそれだけだった───。

「ありがとう!ギター、絶対上手くなるから」

素直に心から言えた言葉はユイにとっても母にとっても心地いいものであった。


数日が経って、ユイは毎日のようにギターの練習をしている。
指は痛い思いをしつつも堅くなっていき、少しづつ上達の色も見え始めていた。
「そういえばさ、俺まだ何もあげてなかったな」
日向の突然の言葉にユイはキョトンとする。
「他になにか欲しいもんあるか?」
「やだなぁ先輩…なんか妙に優しくて気持ち悪いですよぉ……それにもう、こんだけ大きいもの貰ってすごく満足してるから」
そう言ってギターをギュッと抱きしめた。
「本当にもうないのか?」
もう一度の質問に、今度は少しだけ考えるユイ。
「……あるよ」
もう十分と思っていたが、ここは甘えておくことにする。ユイの願いを叶えたいから。
「なんだ?」
「プロレス技でしょ、野球でしょ、サッカーでしょ、…あれ?」
ユイは指を折って数えていたが、あることに気が付いた。
ずっとやりたかったことなのに、なぜかもう達成したような、そんな感覚だった。
(…誰とやったんだっけ)
確かに、自分は誰かにこの夢を叶えてもらった。しかし誰だかは思い出せない。
「…どうした?」
「なんでもない。今のは…昔誰に叶えてもらったからもういいや」
「昔…?お前はどんだけ万能な子供だったんだよ」
「でも、ホームランは打てなかったんだよね」
「そらそうだろうよ…。子供がホームラン打てたらスカウトくるぞ」
笑いながら話しているときも、考えていた。
野球をやっていたときも、サッカーをやっていたときも、プロレス技をやっていたときも…その誰かは出来るまでずっと手伝ってくれて───。
こんな記憶、普通はあるはずがないのに、なぜか強く思い出に残っていた。
どこか他の世界での出来事なのに、ぼんやりと自然な思い出となって心に染み付いている。
「打てなかったけど、満足だったんだ。体が動かせなかったから、あんなに運動ができて」
「え?野球ってユイが事故る前の話だろ?」
「あ…、そっかそうだよね」
自分で言っていて矛盾が生じてしまったのは若干引っかかるが、話しを続けた。
「じゃあ、他にしたいことはないの?」
「…あるよ。…でも」
「でも?」
「…私がギター上手くなって、先輩が誉めてくれるまで言わないっ!」
ユイは舌をペロッと出して笑う。
「…言っておくが、俺は超厳しいぞ」
「それでも、がんばるよ。そうしたら…先輩、私の願い聞いてね。約束」
ユイは小指を差し出す。
「はは、指きりしなくっても俺は約束守るっての」
「それが信じらんないんだもん」
しぶしぶ、と言った感じに日向も小指を出す。
二人は約束を交わした。

ギターを貰ってから、約1ヶ月が経つ頃だった。学校が終わって、ユイのところに行く日向。
いつもどおりの景色に赤みがかかっている。
そんな景色もいつもと変わらないが、最近は一つ日常というものに追加されたものがあった。
「お、今日もやってるな」
部屋に入るまでもなく聞こえてくる、ユイの歌声とギターの音。
日に日に上手くなっていく音たちに日向は教師のような気持ちでいた。
「ねえ、もうそろそろお金取れるくらいには上手くなってんじゃない?」
「自分で言うなっつーの」
「む~…お母さんはいっつも上手いって言ってくれるのに…先輩の耳は腐ってるんだろうね」
投げやりに言い放った。
「だから言ったろ、俺厳しいんだって!」
「限度があんじゃい!」
「自信過剰だろ!!」
二人の痴話喧嘩は外にまで響き渡っている。それを母は影から見守っていた…。

それから毎日と、日向がユイを訪れるたびに歌声とギターの音は絶え間なく続いていた。
しかし、今日はその音が聞こえない。
シンとしているわけでなくとも、いつもの二つの音がないだけで雑音も聞こえないくらいに静かになっていた。
「ユイ?」
日向が扉を開けると、ユイはギターを構えていた。
「レッツスタート!」
「は…、え?」
ユイは気合いの入ったスタートでギターを弾き始める。
日向は何がなんだか分からずに唖然と立っている。
やがてギターに歌声が加わり見事に弾き語りをみせていた。
ただ唖然と聴き入っている日向も昔のと比べての上達の早さは驚くくらいだ。

「…ふぅ、先輩どうでしたか?」
「……あ、なんだよいきなり…」
演奏を終えたユイは清々しい笑顔を見せた。
「…先輩に、完成した曲を一番に聴いてもらいたかっただけだよ。…自信あるつもりなんだけどどう、」
「…へへっ、上手いじゃん」
日向は笑って、ユイの頭を撫でた。素直に感じた感想がユイの体に直接伝わってきたようだった。
「…えへへっ、良かった」
少し照れくさそうに、すごく嬉しそうに頭を撫でられ続けるのだった。

「…先輩」
ユイは話を切り出した。
「ん?」
「約束…」
「あ~、そういや言ってたな。で、何がしたいんだ?」
ユイは少し躊躇って、そして勇気を出して言う。

「…結婚。女の究極の幸せ」


「……結婚?」
日向は聞き返してしまう。ユイは続けて言った。
「でも家事も洗濯も出来ない。それどころか一人じゃ何にも出来ない。
…迷惑ばかりかけてるこんなお荷物、誰が貰ってくれるかな……」
ユイは俯いて言った。
──この願いを言ったのはなんのため?
───そんなの、先輩に……

「俺が────」

──どうしてかな、昔もこんなことあった気がする。
ありえないのに。先輩と出会ったのは1年くらい前なのに。
ここじゃない別の世界、そこでの私はバンドもやっていて、
誰かにやりたいことも叶えてもらって、最後には…、こう言ってたんだ。
『俺が結婚してやんよ!』
叫んでくれた。私が、好きになった人が。
叶うはずがない夢だと思っていたけど、叶えてくれるんだって。
でも、それって本当?

『俺が結婚してやんよ、これが俺の本気だ…!』

そんな…先輩は本当の私を知らないもん…。

『現実が…生きていたお前がどんなでも、俺が結婚してやんよ!もしお前がどんなハンデを抱えてても!』

ユイ、歩けないよ、立てないよ?

『どんなハンデでもってつったろ!』
『歩けなくても、もし子供が産めなくても、それでもお前は俺と結婚してやんよ! 
ずっと、ずっと、傍にいてやんよ…。ここで出会ったお前はユイの偽者じゃない、ユイだ。
どこで出会っていたとしても、俺はお前を好きになっていたはずだ。
また60億分の1の確率で出会えたら、そんときもまたお前が動けない体だったとしても、
お前と、結婚してやんよ!』



「俺が結婚してやんよ!」
「っ!!」
記憶の中から蘇る言葉。
初めて聴いたみたいな感覚に襲われる。
ユイの気持ちはあの時と同じように、抑えきれない、たくさんの気持ちで溢れていた。
「…言っただろ。どこで出逢ったって、また出会えたら…お前のこと好きになって、ずっと傍にいてやるって」
そう言って、日向はユイをギュッと抱きしめる。
長く、ずっといてもこんなに近くに感じることはなかった相手の暖かさを実感するのだった。
「だから…俺はユイと結婚する。約束だ」
──先輩は覚えているの?
───…ううん、そんなことはどうでもいいんだ。
ただ大切なのは…
「…うん、先輩は、また、ユイと結婚してくれるんだね…。
今度は先輩の前から消えたりしない。
ずっと体が動かない自分が嫌いだった、
でも私の人生は素晴らしかった、って胸をはって言えるようにずっと先輩と一緒に、いるよ」
あの日交わした言葉は、二人を再び出逢わせ、そしてたくさんのことを経験させた。
ずっと自分の体が不自由なことを気に病んでいたユイ。
あの日の言葉はユイの重い部分を一瞬で取り除いたようだった。
ユイの安心した気持ちはそのまま涙となってこぼれ落ちる。

──どこで出遭っていたって、私も先輩を何度でも…


こことは違う世界、少年は言った。
青い空に情をかけながら…。
「来世で幸せな家庭でも築いて来い」
それは誰に向けられた言葉なのか。
そのことを知るのは、少年と少年の隣にいる天使だけだという―――。





あとがき

と、いうわけでひなユイSSでした。
SSを書くのが久しぶりすぎて、もう半ば書き方とか忘れているので
前にも増して酷い文かもしれませんが、どうかお許しをm(__)m

ではちょっとだけ解説です。
まずお分かりだと思いますが、この話はアニメ第10話の最後、日向とユイが再び出遭えたらっていう話です。
細かいところは全部妄想です((
そして、二人とも死後の世界のことを少なからず覚えているのです。
特にユイは結構はっきりと・・・。

あと、もうひとつ。
最後の「来世で幸せな家庭でも築いて来い」っていうセリフは4話からです!
今日もやられやく:『AngelBeats!』日向×ユイの伏線は4話野球回にあったっぽい
これ見て、聞いてみたら本当に言ってるんですね!すごい!だーまえ!!
まあ実際は、「来世で幸せな家庭でも築いて来ーい!!www」っていう感じっぽいですけど
勝手に変えました、場面とかもw

というわけで、解説はここまでです。
感想&誤字脱字あったらどうぞ~(^^
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
気が向いたらまた、ひなユイSS書きたいと思ってますb
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[ 2010/06/15 03:00 ] SS(二次小説) | TB(0) | CM(0)

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